ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第13回(ジェロ・マガ Vol.13[2021年9月1日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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本日は、ジェロントロジーに限らず、社会問題や政策のあり方を考えるうえで、基礎となる情報を提供する「政府統計」について、お話ししたいと思います。

そもそも政府統計と一口に言っても、種類は様々です。
統計法上の位置付け、データの収集方法、調査方法等色んな切り口での整理が可能ですが、本日はデータの「期間」に着目し、月次(月ごとの)データを見る際の注意点について解説いたします。

月次データを提供する代表的な統計として、例えば総務省が調査・公表する「労働力調査」という統計があります。
調査の名前に心当たりがない方も、ニュースで「就業者数」や「完全失業率」といった用語は聞いたことがあるかと思います。

○総務省統計局「労働力調査」

「就業者数」や「完全失業率」は景気の動向とも密接に関係しており、政府の景気判断(内閣府公表の「月例経済報告」など)においても、重要な判断指標となっています。

それでは実際に「就業者数」のデータを確認してみましょう。
高齢者(65歳以上)の就業動向が分かる年齢階級(10歳階級)別のファイルを見てみます。

○a-2 就業者【年齢階級(10歳階級)別】

さてExcelのファイルを開いてみると、「原数値」と「季節調整値」の2つのシートがあり、
どちらを見れば良いのか混乱する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからが本日の主題となります。

最新(2021.7)の就業者数について、「原数値」シートは6,711万人(うち高齢者は924万人)、「季節調整値」シートは6,708万人(うち高齢者は928万人)と、数値が若干異なりますが、それには理由があります。

「原数値」とは特に何の加工もしていない「生」のデータです。
「生」のデータさえあれば良いようにも思えますが、月々の変化を追う際には支障があります。

と言うのも月々の統計データは季節的な要因で変動することがあるからです。
例えば、12月はクリスマスや冬休みがあり、個人消費が増えるので、その分人手も必要となり、「就業者数」は増加する傾向にあります。
また、日本酒をお好きな方はよくご存知のように、杜氏さんや蔵人さんは秋から春にかけて酒造りを行いますが、
このような季節労働も季節的な変動要因となります。
以上の理由から「原数値」で月々のデータ比較を行うのは望ましくありません。
「原数値」を使用する際は、前年同月との「差」や「比」を見ることが一般的です。

しかしながら、景気の動向を把握する際など、数値が前月からどう変化したのか確認したい場合もあるでしょう。
そこで過去のトレンドを基に「原数値」から季節的な変動要因を取り除いたのが「季節調整値」です。
「季節調整値」を用いれば、前月との「差」や「比」を見ることができます。

それでは「原数値」と「季節調整値」がどれ程違うのか、実際に見てみましょう。
高齢者(65歳以上)の「就業者数」の推移について、グラフ化することにより「原数値」と「季節調整値」を比較してみました。

グラフ

水色の破線が「原数値」、赤色の実線が「季節調整値」です。
グラフにしてみると、「季節調整値」に比べて「原数値」の変動幅はより大きいことが分かると思います。
すなわち「原数値」で前月との違いをみると、変動幅を過大評価してしまうおそれがあるのです。

説明が若干長くなってしまいましたが、
前年同月との違いを確認したいときは「原数値」前月との違いを確認したいときは「季節調整値」
と覚えてください。

ちなみにニュースでどちらの数字を採用するのかは各社の好み(?)によるようで、以下の記事のうち、
前者では「就業者数」の「原数値」を参照して「前の年の同じ月」と比較していますが、後者は「季節調整値」を参照して「前の月」と比較しています。

【(参考記事1)NHK】
(抜粋)
「7月の就業者数は6711万人で、前の年の同じ月と比べて56万人増えて、4か月連続の増加となりました…」

【(参考記事2)時事通信】
(抜粋)
「…就業者数は男女合計で42万人増の6708万人だった」

このように、何気ないニュースでも正確に理解しようとすると、様々な知識が必要となり、意外に大変なのかもしれません。
本ジェロ・マガが皆様のお役に立てると幸いです。